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所得税の雑損控除か軽減免除(令和7年12月20日掲載)


公開日:2025-12-22

大雨で財産被害なら確定申告を

 今年は8月に熊本県内で記録的大雨が発生し、財産に被害を受けた人も多い。そうした人は確定申告をすることで税金が安くなる可能性がある。「税のはなし特別編」では、来年2月の確定申告に備えQ&A方式で解説してもらった。

 【問い】大雨で自宅は床上浸水し、車も水没しました。所得税の軽減措置があると聞きました。詳しく教えてください。

 【税理士】大雨により住宅や家財、自家用車など生活に通常必要な資産に被害を受けた場合は、確定申告をすることで「所得税法による雑損控除」または「災害減免法による税額の軽減免除」のどちらか有利な方を受けることができます。

 【問い】雑損控除という言葉は、熊本地震の時に聞いたことがあります。

 【税理士】雑損控除は、損失額から計算される一定の金額を所得金額から控除できるというものです。控除額の具体的な計算方法は①資産の損害額(やむを得ず支出した災害関連支出の金額を含む)から所得金額の10分の1を差し引いて求める方法と、②災害関連支出の金額から5万円を差し引いて求める方法の二つがあります。①と②を比較して多い方を選ぶことができます。

 【問い】損害額や災害関連支出の計算方法について教えてください。

 【税理士】損害額は被災した住宅、家財、自動車などの価値が減少した部分の額と、災害関連支出額を合計したものです。減少部分の額は、その資産の災害発生直前の価額を基に計算します。  災害関連支出は、被害を受けた家財の除去費用や原状回復費など災害に関連して支出した費用をいいます。損害を受けた個々の資産について計算するのが困難な場合は、国税庁が示している「合理的な計算方法」を使うこともできます。  災害に関して受け取る保険金等があれば、その保険金を損害額から差し引く必要があります。事業用の資産、娯楽や保養目的で保有する不動産、高価な貴金属などは雑損控除の対象にはなりませんのでご注意ください。  雑損控除の金額が、その年の所得金額から控除しきれない場合は、翌年以後3年間繰り越して、各年分の所得金額から控除することもできます。

 【問い】税額の軽減免除とはどんなものですか。

 【税理士】災害減免法による税額の軽減免除は、住宅または家財の損害額がその価額の2分の1以上である場合に、所得に応じて所得税額の免除や減額が受けられる措置です。損害額については受け取る保険金等があれば、その保険金の金額を差し引く必要があります。  また、具体的に免除・軽減される金額は、所得金額が500万円以下の人は所得税が全額免除となり、500万円超750万円以下の人は2分の1の軽減、750万円超1000万円以下の人は4分の1の軽減となります。所得金額が1000万円を超える人は適用を受けることができません。

 【問い】確定申告時にはどんな書類が必要ですか。

 【税理士】被害を受けた資産の内容・取得時期・取得価額が分かるもの、災害関連支出の明細が分かるものや領収書、受け取った保険金等の金額が分かるもの、所得金額の計算に必要な書類(給与所得者なら源泉徴収票)、市町村交付の罹災[りさい]証明書など被災状況が分かるもの、が必要になります。

 被災されたら所得税だけでなく住民税や固定資産税、自動車税なども軽減措置を受けられる場合があります。ご不明な点はお近くの税理士にご相談ください。

(南九州税理士会 税務審理室副室長・小玉幸広、広報部長・梅野智子)

※掲載の【答え】については、
新聞掲載日現在の法令に基づいています。

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